データ移行(Storage Gateway / DataSync / Snow Family / Transfer Family)
オンプレミスのデータを AWS へ移す、またはオンプレミスから AWS のストレージを使い続けるためのサービス群です。SAA では「一度きりの移行か、使い続けるハイブリッドか」「ネットワークで送るか、物理的に運ぶか」「どのプロトコルで使うか」から、正しいサービスを選ぶ問題が出ます。
ひとことで言うと: DataSync は「ネットワークで運ぶ引っ越し業者」、Snow Family は「トラックで運ぶ引っ越し業者」、Storage Gateway は「社内に置く AWS への窓口」、Transfer Family は「SFTP などの受付窓口」です。
たとえるなら、荷物を全部新居に移すなら引っ越し業者(DataSync / Snow Family)を、今の家に住みながら荷物だけ貸し倉庫に預けて出し入れするなら倉庫の窓口(Storage Gateway)を使います。
このページで押さえる論点
移行サービスの全体像
まず、問題文の要件が次のどれに当たるかを見分けます。
| 要件 | サービス | データの流れ |
|---|---|---|
| ネットワーク経由で移行・定期的に同期 | AWS DataSync | オンプレミスや他クラウド → S3 / EFS / FSx(AWS のストレージ間も可) |
| ネットワークが細い・ない場所から大量のデータを運ぶ | AWS Snow Family | 物理デバイスにコピー → AWS へ配送 → S3 に取り込み |
| オンプレミスのアプリから AWS のストレージを使い続ける(ハイブリッド) | AWS Storage Gateway | オンプレミスのゲートウェイ ⇄ S3 など(ローカルにキャッシュ) |
| 取引先などと SFTP・FTP などでファイルをやり取りする | AWS Transfer Family | 外部のクライアント → マネージドの SFTP などのサーバー → S3 / EFS |
データベースの移行は AWS DMS、サーバーごとの移行は AWS Application Migration Service(MGN)を使います。この 2 つは別のページ「移行(DMS / MGN)」で扱います。
AWS DataSync
AWS DataSync は、ネットワーク経由で大量のファイルやオブジェクトを移行・複製するマネージドサービスです。自分でコピーのスクリプトを書く場合と比べて、次のような面倒を肩代わりしてくれます。
- 転送中の暗号化と、転送後のデータ整合性の検証を自動で行う
- タスクをスケジュールで定期実行できる(毎晩の同期など)
- DataSync が使う帯域幅を制限できる(業務の通信を圧迫しないように)
| 転送元・転送先 | 例 |
|---|---|
| オンプレミス | NFS、SMB、HDFS、オブジェクトストレージ |
| AWS | Amazon S3、Amazon EFS、FSx for Windows File Server / Lustre / OpenZFS / NetApp ONTAP |
| 他のクラウド | Google Cloud Storage、Microsoft Azure Blob Storage / Azure Files など |
オンプレミスのストレージとの間で転送するときは、オンプレミスの仮想化環境(VMware ESXi、KVM、Hyper-V など)に DataSync エージェントを置きます。同じリージョン内の AWS のストレージ間(例: S3 から EFS)で転送するときは、エージェントは不要です。
ネットワーク経由なので、転送時間は回線の帯域で決まります。専用線の Direct Connect と組み合わせると、インターネットを通らずに安定した帯域で転送できます。
AWS Snow Family
AWS Snow Family は、AWS から届く頑丈な物理デバイスにデータをコピーし、それを AWS に送り返して S3 に取り込むサービスです。回線が細い、または回線がない場所(工場、船、災害現場など)から大量のデータを移すときに、ネットワークよりも速く・安く運べることがあります。
代表的なデバイスが Snowball Edge で、次の特徴があります。
- ストレージ最適化とコンピューティング最適化の 2 つの構成がある(ストレージ最適化は 210 TB)
- データは保管中も輸送中も必ず暗号化される
- S3 互換や NFS でデータを書き込める。EC2 互換のインスタンスを動かし、現地(エッジ)で処理することもできる
現在の提供状況に注意: AWS の公式ドキュメントでは、Snowball Edge は新規のお客様には提供されていないと案内されています。新規のお客様には、オンライン転送なら AWS DataSync、安全な物理転送なら AWS Data Transfer Terminal、エッジでの処理なら AWS Outposts などが案内されています。試験ガイドの対象サービスには Snow Family が引き続き載っているので、「回線が使えない場所から大量のデータを物理的に運ぶ」という要件には Snow Family を選ぶ、と覚えておきます。
AWS Storage Gateway
AWS Storage Gateway は、オンプレミスに置いたゲートウェイ(VMware ESXi・KVM・Hyper-V の仮想マシン、ハードウェアアプライアンス、または EC2 インスタンス)を通して、オンプレミスのアプリから AWS のストレージを使えるようにするハイブリッドクラウド用のサービスです。アプリからは、いつものファイル共有・ディスク・テープのように見えます。
| ゲートウェイの種類 | アプリからの見え方 | データの保存先 | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| S3 File Gateway | ファイル共有(NFS v3 / v4.1、SMB v2 / v3) | S3(ファイルをオブジェクトとして保存) | ファイルを S3 に置き、S3 のライフサイクルやバージョニングも使いたい |
| FSx File Gateway | ファイル共有(SMB) | FSx for Windows File Server | オンプレミスから FSx for Windows File Server を低レイテンシーで使う(新規のお客様には提供終了) |
| ボリュームゲートウェイ(キャッシュ型) | ブロックデバイス(iSCSI) | S3 が主。よく使うデータだけ手元にキャッシュ | 手元のストレージを減らしたい |
| ボリュームゲートウェイ(保管型) | ブロックデバイス(iSCSI) | 手元に全データ。スナップショットを非同期で S3 にバックアップ | 全データを低レイテンシーで使い、バックアップだけ AWS に |
| テープゲートウェイ | 仮想テープライブラリ(VTL、iSCSI) | S3。アーカイブしたテープは S3 Glacier Flexible Retrieval / Deep Archive | 既存のバックアップソフトのまま、物理テープをやめたい |
どの種類も、よく使うデータをゲートウェイのローカルキャッシュに置くので、オンプレミスのアプリから低レイテンシーで読み書きできます。
ボリュームゲートウェイの 2 つの型は、データの本体がどちらにあるかで覚えます。キャッシュ型は本体が AWS(手元は一部だけ)、保管型は本体が手元(AWS はバックアップ)です。
FSx File Gateway は、公式ドキュメントで新規のお客様への提供が終了したと案内されています。既存のお客様は引き続き使えます。
AWS Transfer Family
AWS Transfer Family は、SFTP・FTPS・FTP・AS2 のファイル転送サーバーをフルマネージドで提供し、受け取ったファイルを Amazon S3 または Amazon EFS に直接保存するサービスです。
- 取引先が SFTP でファイルを送ってくる、という既存の業務の流れを、相手側の手順やツールを変えずに AWS へ移せます
- サーバーの構築・パッチ適用・スケーリングを自分で行う必要がありません。最大 3 つの AZ にまたがって動きます
- ユーザーの認証には、サービス管理のユーザーのほか、Active Directory や、Lambda を使ったカスタムの ID プロバイダーなどを使えます
- AS2 は、企業間の取引データ(EDI)のやり取りで使われるプロトコルです
要件からサービスを選ぶ
「データをどう使い続けるか」「回線は使えるか」の 2 つが大きな分かれ目です。下のフローチャートで試してみましょう。
質問に答えて移行サービスを選ぶ
要件を思い浮かべて「はい / いいえ」で答えてください。答えた経路が上から順に表示されます。
※簡略化しています: データ量と回線の帯域から転送時間を見積もる計算、FSx File Gateway(新規提供終了)、データベースやサーバーの移行(DMS / MGN)は分岐に含めていません。DataSync と Snow Family の両方を組み合わせる構成もあります。
「ネットワークで送るか、物理的に運ぶか」は、データ量 ÷ 使える帯域で転送にかかる日数を見積もって判断します。期限までに回線で送りきれないなら物理的に運ぶ、送りきれるなら DataSync、という考え方です。
問題文のキーワード → 選ぶべき答え
| 問題文によく出る言い回し | 選ぶべき答えと理由 |
|---|---|
| 「NFS / SMB のファイルサーバーのデータを S3 / EFS / FSx へ移行」「オンラインで」「整合性を検証」 | AWS DataSync |
| 「定期的に同期」「スケジュールで転送」「帯域を制限して転送」 | AWS DataSync(タスクのスケジュールと帯域制限) |
| 「S3 から EFS へ」「AWS のストレージ間でコピー」 | AWS DataSync(エージェント不要) |
| 「回線が遅い・ない」「数百 TB を短期間で」「ネットワークで送ると数か月かかる」 | AWS Snow Family(Snowball Edge) |
| 「オンプレミスのアプリから NFS / SMB でファイルを S3 に保存」「ローカルにキャッシュ」 | S3 File Gateway |
| 「iSCSI」「ブロックストレージを AWS に拡張」「手元のストレージを減らしたい」 | ボリュームゲートウェイ(キャッシュ型) |
| 「iSCSI」「全データに低レイテンシーでアクセス」「バックアップを AWS に」 | ボリュームゲートウェイ(保管型) |
| 「物理テープをやめたい」「既存のバックアップソフトはそのまま」「VTL」 | テープゲートウェイ(アーカイブは S3 Glacier Flexible Retrieval / Deep Archive) |
| 「取引先が SFTP でファイルを送ってくる」「S3 に直接保存」「サーバーを管理したくない」 | AWS Transfer Family |
| 「AS2」「EDI」 | AWS Transfer Family(AS2) |
引っかけポイント
- 「一度きりの移行に Storage Gateway を使う」→ ✕(多くの場合)。Storage Gateway はオンプレミスから使い続けるハイブリッド用。移行して終わりなら DataSync
- 「回線が細い場所から数百 TB を数週間で移すなら DataSync」→ ✕。帯域で送りきれないなら Snow Family で物理的に運ぶ
- 「ボリュームゲートウェイの保管型は、データの本体を S3 に置く」→ ✕。保管型は本体が手元で、S3 にはスナップショットを非同期でバックアップする。本体が S3 なのはキャッシュ型
- 「S3 File Gateway は iSCSI で接続する」→ ✕。S3 File Gateway は NFS / SMB。iSCSI はボリュームゲートウェイとテープゲートウェイ
- 「SFTP サーバーを EC2 に自分で立てるのが運用負荷が最も低い」→ ✕。フルマネージドの Transfer Family のほうが運用負荷が低い
- 「AWS のストレージ間のコピーにも DataSync エージェントが必要」→ ✕。同じリージョン内の AWS のストレージ間ではエージェントは不要
まとめ: SAA 試験で押さえるポイント
- ネットワーク経由の移行・定期同期 → DataSync(暗号化・整合性検証・スケジュール・帯域制限。オンプレミスとの間はエージェントが必要)
- 回線で送りきれない大量のデータ → Snow Family(Snowball Edge は新規のお客様には提供されていない点に注意)
- オンプレミスから AWS のストレージを使い続ける → Storage Gateway。NFS / SMB なら S3 File Gateway、iSCSI ならボリュームゲートウェイ、テープならテープゲートウェイ
- ボリュームゲートウェイ: 本体が S3 ならキャッシュ型、本体が手元なら保管型
- SFTP・FTPS・FTP・AS2 で受け取って S3 / EFS へ → Transfer Family
- データベースは DMS、サーバーごとは MGN(別ページ)
確認問題
参考リンク
AWS 公式ドキュメント(外部サイトが開きます)。